2023年4月15日土曜日

131章-8

 小来は楽屋で居眠りをして、夢を見た。鑼鼓巷の二本の梅の木が一斉に開花し、枝が交錯して伸びて、紅と白が混じり合って彩雲のようにあでやかだった。彼女は喜んで、商細蕊に見に来るよう叫んだ。もし誘引の針金を切ってやらなければ、こんなに元気に花をつけることはなかっただろう。


口を開こうとした時、突然の津波のような喝采に驚いて目が醒めた。


任五が訊いた。「班主は?」


小来は答えた。「舞台じゃないの?」


水雲楼のみんながカーテンコールで舞台に立つ中、中央だけが空いていた。彼らの主役、彼らの商老板の場所だ。商老板はいつまでたっても舞台に出て来ない。喝采が十分ではないと癇癪を起こしたのかもしれない。もっともっと、屋根を持ち上げるほど大きくならないと現れない。


観客は立ち上がって拍手をし、狂ったように商郎を呼んだ。しかし、ライトと喝采の中、その場所はずっと空いたままだった。


小来は幕の後ろに歩いて行き、その空いた場所を見た。両眼には涙が滲んでいたが、唇の端には微笑みが浮かび始めていた。

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