2023年3月31日金曜日

131章-2

 商細蕊が一日あまりの昏睡から目を醒ますと、部屋は紅い光にあふれていた。喉が焼けるように痛み、唇は乾き、今すぐおしっこがしたくてたまらなかった。商細蕊は起き出して、厠をあちこち探し回った。


そこへ小来が茶杯を洗うお湯を持って現れ、微笑んで言った。「蕊兄さんも目が醒めた!」商細蕊は頭がくらくらしていて、「も」の意味が分からなかった。「清源寺の和尚さんが大金を払って読経を頼みに来るわけね。蕊兄さんはほんと神だわ!程の二旦那は本当に目を醒ましたのよ!」


商細蕊は息を呑み、目を見開いて身震いすると、熱い尿で両手を濡らした。


程鳳台は商細蕊よりも半日早く目を醒ました。程家の人々は沸きたち、春節の時のように赤い提灯を吊るして、使用人たちにごちそうを振る舞った。


商細蕊は静かに程鳳台の部屋の窓の下へ行き、中を覗き込んだ。


二奶奶がベッドの縁に座り、程鳳台にお粥を食べさせているのが見えた。子供達がその隣に立ち、乳母が鳳乙を抱いて、父親に話しかけるよう促していた。程鳳台は片手を三男坊の頭に置いて、弱々しくお粥を食べていた。彼の顔には大病が癒えたばかりの憔悴とぼんやりとした表情があった。


二奶奶は言った。「大丈夫、目が醒めたんだからよくなるわ。まず何日かは薄いものを食べて、乾いたものが食べられるようになったら、ベッドから下りられる日も遠くないでしょう」


三男坊は言った。「パパはごはんを食べないとだめだよ。水だけじゃだめだよ。水しか飲まないのはお魚だよ」程鳳台は三男坊の髪を撫でて微笑んだ。商細蕊も部屋の外で一緒に微笑んだ。部屋の中の親密なやりとりをしばらく見たあと、商細蕊は行ってしまった。


商細蕊と小来は程家をぐるりと歩いて回った。何人もの使用人が行き来していたが、二人に挨拶したり話しかけたりする者はいなかった。まるで二人を見たこともないかのように、彼らを避けて歩いて行く。


商細蕊は夢を見ているように感じた。この紅い光が溢れる美しい夢の中で、二旦那は本当に生き返った。


紅い光の覆いから出ると池に行き当たった。秋の月が水面に映っていた。月の白と夜の黒、二色の世界はむしろ心を落ち着かせた。商細蕊はしゃがんで池の冷たい水をすくって顔にかけ、それから口に含んで、仰向いてうがいをすると、岸辺に吐き出した。


小来はこの子供のころと変わらない粗野な振る舞いを見て言った。「蕊兄さん、二旦那が目を醒ましたのに、なぜ不機嫌なの?」


商細蕊は濡れた顔で「なんでもない」と言った。


小来は静かに考えて、今見た程鳳台と家族の仲睦まじい様子のせいで悲しいのに違いないと考えた。しかし、このような悲しみをどうしたらいいのだろうか。これは彼ら二人が始まった時から決まっていたことだ。


しかし小来にはひとつだけ方法があった。

「蕊兄さん、私が結婚して兄さんに子どもを産んであげる」


商細蕊は「私はそんなもの欲しくない」と言った。出した声がしわがれていて自分で驚いたが、真面目に言い継いだ。「お前は義兄さんを待て。義兄さんは大事な仕事が終わったら、戻ってきてお前を娶るはずだ」


彼は服の裾を持ち上げて手と顔を拭くと、まっすぐ大門を出て行った。



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