2023年3月23日木曜日

91章

 久しぶりに帰ってきた程鳳台が眠った後、葛さんが、車に残っていた程鳳台のコートやスカーフを渡しに来た。二奶奶はしばらくぼんやりしたあと、コートを膝に置いてゆっくりとポケットをさぐり始めた。そんなことは今までしたことはなかった。


大したものは入っていなかった。畳んだハンカチ、財布、ライターに煙草、いくつかの電話番号を書いたメモ、べっ甲の櫛。

財布を開いて中身を見た。入っている金額の少なさに二奶奶は微笑んだ。それから内側の、紙幣とは別のポケットに、紙片が丁寧に差し込まれているのを見つけ、それを取り出した。


写真だった。


それを見て、彼女は驚いた。あのとき、舞台は遠く、京劇の化粧は華やかで、彼の本当の顔は分からなかった。しかし、彼女は一目でこれが商細蕊だと分かった。

小さな男の子のような目。悪い心など微塵もないかのようにきれいに笑っている。教育を受けた良家の子息みたいだ。


もちろんこれは、この役者の下手な偽装だ。二奶奶はそれを一目で見抜いて、驚きと怒りを抱えてまっすぐ四姨太太の部屋へ行った。

(四姨太太は程鳳台の父親の四番目の側室。商細蕊の舞台を一緒に見に行った)


四姨太太は「まあ、これは二旦那と誰?きれいね!」と言ったが、真実を知ると衝撃を受け、ハンカチで口を覆って声をあげた。

浮気の記念に写真を撮るなんて、なんと傲慢なことか。しかし、これがこの世のありようだ。男に対しては寛容で、商細蕊のような半男半女の慰みものでさえ、人の口を恐れず昼間から情夫の手を握って堂々としている。そう思うと、なんだか少し悔しくなった。


四姨太太はふと写真を裏返し、「あら、ここに何か書いてあるわ」と言った。字を読んで、思わず緊張して二奶奶をちらと見たが、何も言えなかった。


「何が書いてあるの?言って」


四姨太太は静かにその文字を読んだ。


「伉俪って何?」と二奶奶は聞いた。


四姨太太は彼女の顔を見て、ためらいながら言った。

「伉俪っていうのは文語で夫婦のことよ」


二奶奶は長い間、呆然として言葉が出なかった。程鳳台に対する不満が瞬く間に商細蕊に移り、写真を指差して冷笑した。「男役者のくせに、二旦那と夫婦になりたいの?なんて恥知らずな!お前は夢を見てるのよ」




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