2023年3月23日木曜日

97章

 程鳳台は、曽愛玉を連れて行った病院で蒋夢萍に目撃され、子供が生まれることを二奶奶に知られる。二奶奶はショックを受け、范漣の子だと説明されても信じない。程美心に「気持ちが落ち着くまでしばらく離れて暮らしたら」と言われ、程鳳台は数日范漣の家に行くと告げる。


二奶奶は二旦那を出て行かせたくなくて、「出て行くなら印鑑を置いて行って。程家の財産は私の持参金が生んだものなのよ」と叫ぶ。

この言葉は程鳳台を深く傷つけ、印鑑も小切手帳も置いて、荷物をまとめ、察察児を連れて出て行く。行き先は商細蕊の家。




程鳳台が家を出てきたと知った商細蕊は、喜びで狂ったように大笑いしながら程鳳台の背中に飛びついた。手に持っていた歯ブラシとコップを置く暇もなく首にしがみつき、水がこぼれて程鳳台のシャツを濡らした。こんなに幸せそうな彼を程鳳台は見たことがなかった。商細蕊は笑いが止まらず、近所の犬に吠えられた。




商細蕊は疲れていたが、もうまったく眠くなくなって、ベッドの端に座って靴下を脱ぎながら俗っぽい歌を口ずさんでいた。程鳳台が入ってくると、自分の隣を手で叩いて座るよう促した。「どうやって追い出されたの?殴った?どうして?早く話して!」喜色満面で、大きな祝い事について尋ねているかのようだった。


「少しは空気が読めないのか。私は全然嬉しくない。目の前で得意そうな顔をするのはやめろ」

商細蕊は口の端が耳に届くほど笑って、目は弓形になり、明るく喜びに満ちて、「無理!我慢できない」と言った。


程鳳台は商細蕊の尻を蹴って「二旦那に足湯を持って来い。気分がよくなったら話してやる」と言うと、商細蕊は急いで足湯の桶と湯を持ってきた。


程鳳台はゆっくり話し始め、商細蕊は興味深々で聞き、頭を振って、喜んで、拳を擦って、最後に言った。「『あの誰か』(梦萍のこと)が告げ口したのか。いつも人の家の事に首を突っ込んで。あいつが口を出すんじゃ、もうあなたと二奶奶は二度と仲直りできないね」程鳳台は一層憂鬱になった。


「でもあなたは女に頼って事業を興した小白顔(ジゴロ)だろ。二奶奶は濡れ衣を着せたわけじゃない。なんで本気で怒ってるの?」

程鳳台は苛立ち、足拭きで商細蕊の腕を叩いた。商細蕊はあまりにも幸せだったので、叩かれても気にならなかった。


程鳳台は冷笑した。「まだ君に食わせてもらってるわけじゃないのに、私を小白顔呼ばわりするな」


商細蕊は真面目に、「これからは私が食わせるから、私の小白顔になればいいよ」と言った。


「私は金喰いだぞ。西洋の一流品ばかり買うし、妹を学校に行かせなきゃならない。もう一人養わなきゃならない小さいのもいるし」


「私はお金持ちだから、あなたのお父さんだって養えるよ」


商細蕊は今日この時、初めて程鳳台のすべてが自分のものだと感じることができた。この役に立たない坊ちゃんは、自分に完全に依存している。養うべき家族がいて、餌が運ばれてくるのを待っている。棒で叩かれたとしても、程鳳台にはほかに行くところはない!このことを認識すると、商細蕊の心はしっかりと落ち着いた。


彼の胸は甘い蜜で満たされ、膨らんで大きな球になり、体中の穴から蜜が溢れ出てくる気がした。口の中はもう甘い味がした。体のどこにも満足のない場所はなく、喜びのない場所もなかった。この日から、程鳳台は商細蕊の心の別の場所を占めるようになった。彼は一人の人をこんなに愛したことはなかった。


商細蕊は程鳳台の下になって、首に腕をまわして言った。「本当に、二旦那、あなたの体の下には大金庫が眠っているんだよ。私たちの一生に十分だ。これからは、ちゃんと私について来て!」




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